妖精の指先その4


WEST(MTS)

 ※この文章は巨人が小人を様々な手段で弄ぶ表現が含まれています。
  残酷な表現等が含まれますので、18歳未満の方は読まないで下さい。

 4.古代妖精の遊び

 「ねぇ、向こうに泉が見えるよ。
  ちょっと、革靴、洗いたいんだけどいいよね?」
 トロル達を踏み潰した後、高い所から周りを見ていたリーズが言った。
 「そうですね、是非洗ってください…」
 ファフニーは即答した。むしろ、洗ってくれないと、困る。
 でも、どこに泉があるんだろう?僕は小さいから、遠くが見えないや。
 「じゃ、行こう」
 と、リーズは屈みこんで、ファフニーに手を伸ばして、彼を摘みあげる。
 「わ、何するんですか!」
 おもちゃにするのは、後にしてよ。リーズ、頭がおかしいんじゃないの?戦いが終わったばかりなんだよ?
 と、ファフニーはジタバタ暴れた。彼を摘んだリーズの親指と人差し指は、彼をリーズの胸元近くまで運んだ。
 「こ、こら、落ちたら危ないよ!別に変な事しないから、おとなしくしてよ。
  運んでいってあげるの!」
 リーズはジタバタするファフニーを、胸の前で、手のひらの上にそーっと載せ直した。間違えて落とさないように、軽く手のひらを握るようにして、彼を包む。
 「あ、なるほど…
  ありがとうございます」
 そういう事なら、おとなしくしていよう。てっきり、また、おもちゃにされるのかと思った…
 確かに、大きくなったリーズがファフニーに合わせてゆっくり歩くのは、いらいらするだろうし、逆にファフニーがリーズに合わせて歩くのは、どう考えても不可能だ。
 だから、リーズがファフニーを運んであげるのが一番だ。
 リーズは、ファフニーを落とさないように気を使いながら、泉の方に歩く。
 「け、結構揺れますね」
 「あ、平気?」
 「う、うん。我慢は出来ますけど…」
 リーズが歩くと、手のひらの上のファフニーには、彼女の体の小さな揺れが伝わってきた。それは、ファフニーにとっては小さいものではなく、機嫌の悪い馬にでも乗っているかのようだった。リーズは、出来るだけ優しく彼を運んだ。
 彼女の足で歩くと、少し遠くに見えた泉にも一分とせずに着いた。
 リーズは、そーっとファフニーを地面に降ろす。
 「ありがとうございます…」
 手のひらに包まれて運ばれると、何だか、人形か何かになったみたいだなー。とファフニーは思う。
 「あー、それそれ。
  いちいち、真面目にお礼とか言わなくていいんじゃない?
  お友達なんだし」
 リーズはファフニーに言いながら、革靴を脱いで洗い始めた。
 「まあ…そうですね。いちいち言うのも変ですね」
 ファフニーは頷く。本当に、今日はリーズに説教されたりからかわれたり、そんな事ばかりな気がした。
 「でも、ファフニーの無駄に真面目な所、可愛いから良いと思うよ!」
 「そうですか…」
 褒められてるのか、からかわれているのか、いまいちファフニーにはわからなかった。
 「そういえば、さっき思ったんですけど、リーズの革靴ってすごい丈夫ですね?
  なんだか、リーズに合わせて大きさも変わるみたいだし」
 ファフニーは話題を変えて、リーズが大事そうに洗っている革靴を見ながら言った。
 先程、ファフニーの2倍位大きいトロル達が何度叩いても、傷一つ付かなかった革靴だ。これに関しては、リーズがすごいんじゃなくて、革靴がすごいと思った。
 この丈夫さと、リーズの体に合わせて大きさが変わる事を考えると、リーズの革靴は伝説レベルの装備品だと思える。
 「あ、これ?えへへ、すごいでしょ。
  この靴とローブね、昔、仲良くしてた魔法使いの人が作ってくれたんだよ」
 「え、人が…?」
 意外な答えだった。てっきり、妖精か神様が作った道具かと思った。少なくともファフニーの国には、こんな魔法の装備を作れる者は居ない。
 「うん。昔はね、そういう人も居たんだよ?
  あたし達、古代妖精にも作れないような物を作ったり、出来ない事が出来た人が…ね」
 言いながら、何だかリーズは遠くを見ているようだ。
 そういえば、神話の時代には、リーズの仲間の古代妖精達も居たはずである。
 …て事は、リーズみたいに大きい妖精の子が、いっぱい居たのかな?
 もしかして、他にもリーズみたいな子が、お尻を振ってたりしたのかな…
 …わー、だめだ。お尻の事は忘れよう。
 16歳の少年には強すぎた刺激を忘れようと、ファフニーは努力する。
 でも…どんな世界だったんだろう?
 知ってみたい気持ちはあった。
 「ねえ、リーズの仲間の妖精さんたちがこの世界に居て、友達の魔法使いの人が居たりした頃って、どんな感じだったんですか?
  良かったら、教えてくれませんか?」
 リーズみたいな性格の子、小さい生き物で遊ぶのが好きな子がいっぱい居たなら、ちょっと怖い世界だな。とも思いながら、ファフニーは聞いてみた。
 「あ…昔の事?」
 リーズは言葉に詰まる。
 少し、沈黙。
 …あれ?どうしたのかな?
 黙り込んだリーズの顔を見上げてみる。
 彼女の目が涙ぐんでいるのに、ファフニーは気づいた。
 「あの、ごめんなさい、嫌な事だったら、話さなくてもいいですよ…」
 ファフニーは優しく言った。
 「うん…ごめんね、ちょっと…ね。
  その話は、またいつか…ね」
 リーズは頷いた。
 よっぽど、嫌な事があったんだな。と、ファフニーはリーズに聞いた事を後悔した。
 かける言葉がなくて、沈黙が訪れた。
 …なんだか、嫌な事を思い出しちゃったな。
 リーズは気分が悪くなった。
 別にファフニーに悪気があったわけじゃ無いんだろうけど、嫌な気分だ。
 …あーあ、遊びたい。楽しい事をしたい。
 リーズは、何か気晴らしをしたいと思った。まだ、もう少し時間がある。
 …そうだよ、気晴らしのおもちゃなら、近くに最高のおもちゃがあるんだ。
 リーズは、ファフニーの方を見て、微笑んだ。
 「…ちぇ、ファフニー?」
 舌打ちをして、甘えるような口調で、リーズが言った。
 「女の子を泣かすなんて、ひどいなぁ。
  君も…泣かしちゃおうかなぁ?」
 にやにやとしながら、ファフニーの方に手を伸ばし、問答無用で彼を手のひらに乗せた。
 リーズは、頭だけ残して、ファフニーを手の中に握った。
 彼の手も足も自分の手のひらに包んで、その自由を奪い取った。
 ファフニーは、リーズの手から頭だけ出る格好で、彼女に見つめられる。
 確か、この前もこんな事をされた。まあ、あの時のリーズは、とても怒っていたけれど…
 今のリーズの瞳は、楽しそうにしているファフニーを覗き込んでいる。
 …えへへ、あたしを嫌な気分にさせた、ファフニーが悪いんだもん。おもちゃになってもらうよ?
 リーズはファフニーのちっちゃい体で、遊びたかった。
 「リーズ…後にしようよ…」
 ファフニーはリーズの手の中から、頭だけだして、一応、小さく彼女に言ってみた。
 「やだ、今」
 リーズは即答した。
 にぎにぎ。
 リーズが、ファフニーを握った。
 「わ、あんまり力を入れないで下さい!」
 彼女の細い手に全身を締め付けられて、痛みを感じた。
 リーズは、ファフニーの声を聞いて、彼を握る手に、逆に力を込めた。
 ファフニーは、苦しいから抵抗する。
 抵抗するけど、リーズの手からは逃げられない。彼女から逃れるには、ファフニーは小さすぎた。
 リーズは、彼の小さな体が、手のひらの中で動いているのを感じる。気持ちいい。
 …なんで、人間って、こんなにちっちゃくて無力なんだろう?
 にぎにぎ。
 リーズは、さらにファフニーを握ってみた。
 あんまり力を入れすぎると潰れちゃうから、少しづつ力を強くする。
 「リーズ!痛いよ!
  そんなに力を入れないで…」
 ファフニーの声が聞こえる。少し、涙声だ。
 …ま、声が出せるうちは平気だよね。
 リーズは手のひらを開いて、ファフニーを覗き込んだ。
 「リーズって…弱い者いじめは嫌いって言ってますけど…
  これは、弱い者いじめじゃないの?」
 手足が自由になったファフニーが少し涙目で、リーズの方をにらんでいる。苦しかったのだろう。
 …うふふ、口答え出来るんだから、まだまだ大丈夫だよね?
 「えー、ファフニーって、弱いの?
  弱いのに、あたしの事を護るって言ったの?」
 からかうように、目をぱちぱちとしながら、リーズはファフニーに言った。
 …ファフニー、弱くないと思うけどな。と、リーズは彼の事を思う。
 ファフニーは優しいし、あたしが甘えると、甘えさせてくれる。あたしの事を護るって、がんばってくれる。
 弱くないよ…君は。
 リーズは、にっこり微笑んだ。
 にぎにぎ。
 リーズはファフニーを握った。
 ファフニーが苦しくて、彼女の手のひらの中でもだえる。
 …これ、いじめてるんじゃなくて、遊んでるんだよ?
 「意味がわからないです!
  僕、リーズより弱いに決まってるでしょ?
  僕がリーズより強かったら、一人で行ってます!」
 文句を言ってくるファフニーの事を、心地よく思う。
 …ファフニーって、優しくて大好きだよ。
 にぎにぎ。
 小さくて無力なファフニーは、リーズの成すがままに何度も握られる。
 …でも、ファフニー、ちっちゃくて可愛いから、あたしの指一本にも敵わないんだよね?
 リーズは手のひらを開いて、小さな生き物を見つめた。
 ファフニーは、優しくて、弱くないから…
 ファフニーは、あたしの指一本よりも無力だから…
 だから、リーズは彼をおもちゃにして遊びたかった。
 にぎにぎ。
 えへへ、今度はちょっと危ないかな?
 リーズは、ちょっとだけ力を入れてファフニーを握った。
 「もう、やめてよ…」
 弱々しい声で、ファフニーが言った。
 「ファフニー…ひどいな」
 リーズが小さく言った。
 「あたしが君より弱かったら、『一緒に手伝ってくれ』って、そういう風には言ってくれないって事ね。
  あたしの力だけが…目当てなの?」
 リーズが答えると、
 「そ、それは…そうじゃなくて…」
 ファフニーが言葉に詰まる。
 あはは、なんか言い負かすことも出来たよ。嬉しいな。
 言葉に詰まっていても、ファフニーの言いたい事はわかる。いいよ、何にも言わなくても…
 うんうん。
 やっぱり、ファフニーは手のひらに乗っけて遊ぶのが一番だ。
 リーズは、ひとまず満足だった。
 でも…まだ遊びたい。
 いつまでも、いつまでも、遊びたい。と思った。
 「そういえば、あたし、トロルを倒してあげたり、お尻とか見せてあげたり、ファフニーの為にすごいがんばったじゃない?
  だから、ファフニーもあたしの為にがんばらないと…ね?」
 言いながら、もう片方の手を彼に伸ばし、その指を近づけた。
 「もう…十分がんばってるつもりですけど?
  人形みたいに、リーズに握られてあげたと思うんですけど?
  リーズのおもちゃに、十分なってるつもりですけど!?」
 ファフニーは早口に言った。
 …あ、結構すねてる。
 まあ、いいや。
 気にせず、リーズはファフニーに指を伸ばす。
 ファフニーの胴より太いリーズの細い指は、彼を手のひらの上に転がした。
 コロコロ。
 …僕ってリーズの何なんだろう?
 リーズに転がされながら、ファフニーは考える。
 虫けら?
 違う。
 リーズは僕を踏み潰したりはしない。
 ゴミくず?
 違う。リーズは基本的には僕の事を気に入っているとは思う。
 人形?おもちゃ?何だか面白い、ちっちゃな生き物?
 …そんなところかな?
 一応、友達って…思ってくれてるのかな…?
 大きくなったリーズには、あんまり、対等に扱ってもらってる気がしないや…
 まあ、何でもいい。
 「リーズ!トロルを倒してくれたのはともかく、お尻は、リーズが勝手に意味がわからない事してただけしょう?」
 力じゃ敵わないから、せめて、口答えはしようとファフニーは思う。
 「でも、ファフニー、あたしのお尻、じーっと見てたじゃない。
  なんか、変な事、考えてたんでしょ?」
 リーズは、ファフニーを撫でていた細い指を、そーっと、彼の股間の方に伸ばす。男の子だけが股間に持っている物の形を探ってみた。
 「リーズ、やめてよ!」
 ファフニーが、半泣き声で叫んだ。
 「…ほら、やっぱり、今も考えてる」
 ファフニーの股間をなぞってみて、手触りからリーズは確信した。
 「リーズ!そういう、はしたない事は、やめて下さい!ひどいよ!」
 「うるさいなー、変態め!」
 あはは。やっぱり、あたしのお尻見て、変な事考えてたんだね。変な事考えてる人が、何言っても、説得力無いもんね。 
 ぐりぐり。
 リーズは、ファフニーを人差し指で手のひらに押し付ける。恥ずかしい事をされて怒ったファフニーは、本気で人差し指をどかそうとするが、当然、びくともしない。
 …今日は、ファフニーの為に、色々してあげたんだから、もっともっと遊んでもいいよね?
 「じゃ、どんな風になってるか、見ちゃおっかなー」
 と、リーズは親指と人差し指で、小さなファフニーのズボンを、器用につまんだ。
 彼の着ている物を、剥ぎ取ろうとする。
 「も、もう!いい加減にして!
  これ以上ひどいことしたら、絶交するよ!リーズ!」
 体も、男の子の心も、両方おもちゃにされている。リーズに敬語で話す事も、ファフニーは忘れた。
 ファフニーはリーズの指に噛み付こうとしたが、柔らかいリーズの指の弾力には、歯も立たなかった。
 あ、それ、気持ちいいな…
 自分の指に触れて、小さな歯を立てようとするファフニーの唇が、まるでキスみたいだ。とリーズは思った。
 このまま、彼の服を脱がせたら。そしたら、あたしもファフニーに…
 リーズは、次の遊びを考えている。
 彼女の指は、今にも彼のズボンを下ろしそうだ。
 ファフニーは、今にもリーズの指に服を剥ぎ取られそうだったが、
 …リーズは、次に僕をどうする気なんだろう?
 と、次に彼女に何をされるのか、少しだけ期待している自分に気づいた。
 不思議な気持ちだった。
 リーズが彼よりも大きなトロルを虫みたいに踏み潰している時、少し怖かったし、お尻を見せつけられたり、股間を触られたりして、恥ずかしい思いもさせられた。
 …でも、リーズにされるんだったら…いいや。
 そんな風に思う気持ちを少しだけ感じた。
 …僕は心の大事な部分を少し、リーズに握り潰されて、食べられちゃったのかな?
 ファフニーはリーズの指に本気で抵抗してはいたが、そういう風に感じていた。
 だが、二人の歪んだ時間は、それで終わりだった。
 「…あれ?
  そろそろ、時間切れかな。
  ちぇ、また今度だね」
 リーズが、残念そうに言った。
 そろそろ、彼女が楽しめる10分間は終わりそうだった。
 やがて、薄い光が辺りを包んだ。
 リーズは、ファフニーと同じ大きさに戻った。
 …あーあ、後30秒でいいから、時間が残ってたらな。
 リーズは残念がった。
 同じ位の大きさになったファフニーとリーズは、泉のほとりに佇んでいる。
 リーズは、ちょこんと座っている。ファフニーは荒い息をして、彼女の側に死人のように倒れている。
 二人の間に、安らぎとは少し違う沈黙が、しばらく訪れた。
 やがて、息を整えて休んだ後、ファフニーが起き上がって言った。
 「もう、リーズ!やり過ぎです!!」
 「そ、そうかな?」
 ファフニーがリーズに怒鳴って詰め寄る。
 大きな声で怒られると、怖いなー
 リーズは、少し逃げ腰になる
 「じゃ、リーズは、そのローブを力づくで脱がされたり、体を撫で回されたりしても良いんですか?」
 「や、やだよ!そんな事したら、怒るよ!」
 リーズはあわてて言った。
 「それに、僕はおもちゃじゃなくて生きてるんだから、もうちょっと大事に扱って下さい!」
 「えー、大事に扱ってるもん!
  大事にしてなかったら、トロルみたいに踏み潰してるよ!」
 …なんか、ファフニー、本気で怒ってない?
 とりあえず言い返しながら、リーズは思った。ちょっと遊んだだけだと思うんだけどなー…?
 …て、ちょっと待って!それどころじゃない!
 「ファフニー!気をつけて!」
 リーズが真剣な顔で言った。
 「ど、どうしたんですか?」
 「…また何か来てる!すぐ近くだよ!」
 と、リーズが森の方を指差した。
 血まみれの生き物が1匹、ゆらゆらと歩いていた。体中から血を流している。普通の生き物なら、死んでいるような傷だ。
 「ト、トロルだよ!
  ど、どうしよ、ファフニー?あたし、時間切れだよ!」
 「リーズ!最後の方、ちゃんとトロルにとどめを指さなかったんじゃないですか!?」
 「ああああ、そうかも!そうだよ!一回づつ適当に踏んづけただけだよ!」
 ファフニーにお尻を振ってみせた後に踏み潰したトロルは、一回づつ適当に踏んだだけだった。もっとも、それでも普通の生き物なら即死なのだが…
 …あたし、もしかして、だめな子?
 「ファフニー、どう?戦える?」
 「申し訳ありません…」
 ファフニーは首を振って、リーズをにらんだ。
 「先程、頭のおかしい妖精さんに、貞操を犯されそうになりまして…
  必死に抵抗したので…戦う力が、もう残ってないのです」
 正直、立つ気力もほとんど無い、ファフニーだった。冷たく澄んだ声で、リーズに言った。
 「あああああ、ごめんなさい、ファフニー!
  あたし?あたしなの?あたしが遊びすぎたせい?」
 「はい。あなたのせいです」
 真顔で詰め寄るファフニーに、リーズは素直に謝った。
 トロルが二人に、よろよろと近づく。
 仲間を殺された恨み。自分自身も散々痛めつけられた恨み。そして、持ち前の再生能力。
 リーズに踏み潰されたトロルだったが、奇跡的に死の淵から生還していた。
 「さ、とにかく逃げますよ」
 ファフニーは不機嫌そうだ。
 …でも、リーズの事は護るからね。
 彼はリーズの腕を掴んで、立ち上がった。
 「う、うん。でも、もう疲れたよぉ…」
 リーズは愚痴を言いながらも、ファフニーに手を引かれて逃げる。逃げなくてはトロルに襲われる。
 「リーズが馬鹿みたいな事してて、トロルをちゃんと踏み潰さないから悪いんです」
 「え、えー…
  で、でも、ファフニーだって、とどめ位なら指せるでしょ?」
 「リーズが、『あたしに任せて』って言ったから、任せたんですよ?」
 「もー!
  そもそもファフニーが弱いのが悪いの!
  あたしの事、護ってくれるって言ってたじゃないの!
  全然ダメじゃない、ちっちゃいし」
 「リーズだって、僕が勝てないのが居たら踏み潰してくれるんじゃなかったんですか?」
 怒りに燃えるトロルから逃げて、ファフニーとリーズは走る。
 「そ、それは…
  ちぇ、確かに、あたしがちゃんと踏み潰さなかったのが悪かったわよ!
  あーあ!もー!トロルもファフニーも、全部一緒に、まとめて踏み潰しちゃえば良かった!」
 「何で僕を踏み潰すんですか!」
 そろそろ、日も沈む。
 トロルが追ってくるから、疲れてるけど大慌てで逃げる。
 でも、口ゲンカをする余裕が、ファフニーにもリーズにも、まだ残っていた。
 「ファフニー、ごめんねー…」
 「もう、謝らなくてもいいです」
 ファフニーは、小さな声で謝るリーズの手を引いた。
 色々、考える事もある。
 でも、リーズを護るって約束は絶対果たす
 竜の魔物を倒すという事を抜きにしても、ファフニーはそういう風に思ってい
 リーズは、手を引かれるままに、ファフニーに付いていく。
 追いかけるトロルは瀕死だし、逃げる二人も疲れている。良い勝負だ。
 街は、まだ遠い。
 どこまでも逃げる二人は、仲良く走り続けた…

 (3話に続く)