魔神の攻城戦
 MTS作

 ※この話は残酷な描写と排泄行為等の下品な描写を含んでいますのでご注意下さい。
 ※不快な気持ちになるかも知れませんので、本当にご注意下さい。


1.雲の魔神ちゃん

例えば、雲を貫いて天まで届く塔。
どこに頂上があるのか、文字通り、見る事すら出来ない巨大な塔。
もしもそんな物があれば、人は、その大きさに目を奪われるでしょう。それを建てた持ち主の力の大きさに跪く事でしょう。
大きさというのは、力の象徴として、人を跪かせるには分かりやすい手段です。
なので、西の国でも東の国でも、偉い王様や貴族が、巨大な建物を造って自分の力を誇示してきました。
…とはいえ、さすがに文字通りに雲を貫く程…数千メートルの高さまでそびえる様な塔を建てた者はいませんでした。
それは、人間の力を越えた大きさ。人間にはどうしようもない大きさだからです。
では、そんな巨大な物を見たとしたら、人間はどうなってしまうでしょうか?
ある、風が吹き荒れる曇り空の日の出来事です。
仇…つい最近まで奴隷だった無力な少年…は、腰を抜かして巨大な塔を見上げていました。
彼を挟むようにして、二本の巨大な塔が雲を貫いて立っていました。
随分と奇妙な塔です。
二本の塔は真っ直ぐに建たずに、少し斜めにそびえ立っていました。
遥か雲の上空で、それは交差するかのような角度です。
それに、数百メートル程の高さがある、塔の根元の部分は複雑に分かれ、人間の足指のような形をしていました。
…というより、肌色の柔らかいそれは、数百メートルの大きさではあるものの、人間の足指に間違いありませんでした。
仇は、自分を跨いで立っている巨大な足を見て、声が出ませんでした。
雲を貫いて天まで届く足です。
…ごぅ…
遥か上空、雲の上の方で空気が震えています。
轟音に乗って、声が降りてきました。
「うふふ、どうですか、ご主人様?
 このように、自分の身体でしたら、雲よりも大きくなる事が出来ます」
自慢げな調子の女の子の声が、上空の風の向きを変えていました。
少女の声は、雲を貫いてそびえる塔が生き物の一部である事…彼女の足である事を表していました。
「よ、よくわかりました…」
ご主人様と呼ばれた仇は、力無く呟く事しか出来ませんでした。
「この事から、私の一族は魔神の中でも特に『雲の魔神』と呼ばれ事もあります。
 ですので、もしもご主人様が望むのでしたら、『雲の魔神ちゃん』などと呼んで頂いても結構でございます」
うふふ、すごいでしょ?
と、自慢するような魔神の娘の声でした。
彼女が比較的穏やかな性格で自分には従ってくれるものの、自慢したり悪戯したりする事も好きな面も持っていることを、仇は知っています。
だが、そんな雲を吹き散らしてしゃべる彼女の声が、急に狼狽しました。
「あ、あの、というかご主人様、どちらにいらっしゃいますか?
 雲が邪魔ですし地面も遠すぎますので、よく見えないのですけど…」
どうやら、雲を貫いてそびえる彼女の力でも、何万メートルも下に広がっている地面。
緑色の大地の上に居る、小さな染みのような生き物を見て、その小さな声を聞く事は出来ないようです。
「ご、ご主人様、生きていらっしゃいますよね?」
狼狽した声が響きます。
数百メートルの大きさの彼女の足指が、微かに震えて地震を起こしますので、仇は腰が抜けていなくても立っている事が出来なかったでしょう。
彼女が少し声を発しただけで、空気を震わせて雲が流れます。
彼女が少し体を動かしただけで、大地に大穴を開けて揺らします。
今の彼女は、あまりにも大き過ぎました。
人間の力を越えた大きさ。人間にはどうしようもない大きさでした。

2.魔神ちゃんのお願い

「と、というわけで、私にとっては、先ほどのように大きくなる事は造作も無い事です」
平静を装おうとしても、魔神の娘の目は泳ぎ、声は上ずっていました。
嘘をついたり、演技をしたりする事は苦手なようです。
元の大きさ…人間の100倍程…に戻った魔神の娘は、四つんばいになるようにして地面に手をつき、仇の事を覗き込んでいました。
地面に貼りつく小さな染みを見る事が出来ない魔神の娘でも、地面を這いつくばる虫けら程の大きさの男を見る程度の力はあるようです。
「死ぬかと…思いました」
仇は正直に感想を述べました。
「大変申し訳ございません…」
魔神の娘は、地面を這いずる虫けらにしょんぼりと謝りました。なかなか見られる光景ではありません。
「…と、それはそれとして、このように私はご主人様たち、東の小島の小人達に比べれば偉大な存在でございます」
気を取り直したのか、魔神ちゃんは淡々と仇に対して言いました。
「は、はい、それはよくわかりました…
 で、でも…」
仇はしどろもどろに答えました。
「どうされましたか?」
ご主人様に何か失礼な事でも言ってしまったかと、魔神の娘は胸を震わせました。
「何で裸なんですか?」
仇は正直に聞きました。
なるほど、彼の言う通り、魔神の娘は衣服を一切まとわず、白い裸体を晒して四つんばいになっていました。
もしもこのような格好で街を歩いていたら、男たちに襲われてしまうかもしれません。多分、返り討ちに踏みつぶされてしまう可能性が高いとしてもです。
「先ほど、巨大な姿になる時に邪魔だったので脱いだのですが…
 ご主人様は私の裸はお嫌いでしたか…?」
はて、このご主人様は、私の裸が嫌いだったかしら?
魔神ちゃんも首を傾げました。
「いえ、好きか嫌いかだったら好きですけど…あ、いえ、もういいです」
自分の質問が愚問だった事に気づいた仇は、それ以上尋ねるのをやめました。
首を傾げながら、魔神ちゃんは言葉を続けました。
「私には…耐えがたい1000年間でございました。
 ご主人様のような虫けら…あ、い、いえ、失礼しました。
 ご主人様たち、東の小島の小人…やっぱり失礼な言い方をさせて頂くと、虫けらのように劣った小人達です。
 それに、私は囚われ、ランプに閉じ込められていたのです」
魔神の娘は昔の出来事を思い出して怒っているのか、大分失礼な事をご主人様に言っています
「最初の頃は、私をランプから助けてくれる人が居たら、その人をくしゃくしゃに握りつぶしてから、この島中を踏み潰してしまおうと思いました」
 でも、何百年かすると、段々落ち着いてきましたので、私をランプから助けてくれた人だけは、大切にしようと思いました。
 ご主人様として仕えて、3つ位願い事をかなえてあげて…後の事は、それから考えようと思ったのです」
…最初のころじゃなくて良かったなと、仇は思いました。
「でも…申し訳ないのですが、やっぱり、少し気が変わってしまいました」
少し申し訳なさそうに、魔神の娘は言いました。
「き、気が変わったとは、どういう事ですか?」
胸騒ぎを覚えながら、仇は答えました。
「私は…ご主人様の事は気に入っております。
 私と同じく囚われの身であった方ですし、優しい方ですし…」
魔神の娘は地面を這いずる虫けらに言いました。
「だから…私の心に怒りが生まれて参りました。ご主人様を苦しめた者達が許せません。
 やはり、この小島の小人達は、私にとっては憎しみの対象です。
 この島の全てを踏み潰すとは…申しません。
 せめて、ご主人様を捕えていた者達の都だけでも、滅ぼしてしまって良いでしょうか?
 これは…私の復讐も兼ねての事です」
どうか、お願いします。と、魔神の娘は頭を下げた。
なるほど…
物理的な問題は別としても、自分には彼女を止める事は出来ないと、仇は思いました。
どうぞ、好きなようにして下さいと、仇は魔神ちゃんに答えました。
「ありがとうございます。
 それでは、国を一つ滅ぼしてまいります。
 ご主人様は…目を背けていて頂けますか?」
魔神の娘は、にっこり笑って答えました。
仇は胸が締め付けられるような気分を感じました。
恐らく、これから一つの都市が、この島から消えるのでしょう。
…僕は今、一つの都市の運命を決めたんだ。
魔神の娘に惨殺される人々の中には罪が無い者も大勢居るかもしれません。
…でも…それでもいい。
つい最近まで、手足の腱を切られ、立つ事も出来なかった少年の中にも冷たい心が宿っていました。
僕も…憎いから。

3.魔神ちゃんの復讐

「もしも生き残りたいなら、都の中心へと集まりなさい。
 逃げようとする者は、全て踏み潰します」
突然響いた声は、機械のように冷たく感情が籠っていない言葉でした。
声の主は、裸の女…のようでした。
都に響いた声は、あまりにも唐突な怒声でした。
身長は150メートル程でしょうか?
細い目を怒りに震わせた裸の少女が、突如、空から都に降りてきたのです。魔神の娘です。
その素足が、都の中心部近くの家々を薙ぎ倒しながら地面に降り立ちました。
呆気に取られて、人々が裸の少女を見上げていると、彼女は、淡々とですが大きな声で命じました。
「さっさとしなさい!」
都の隅々まで届く声です。
途端に都はパニックになりましたが、魔神の娘は気にも留めずに歩き始めました。
巨人の行進が始まりました。
都の人々は、わけもわからず巨人から逃げ惑いました。
20メートル程の長さがある魔神の娘の足は、数軒の家を踏み潰すのに丁度良いサイズでした。
木の家も石の家も、彼女の体重を支える事は出来ませんでした。中に人が居ても関係ありませんでした。
魔神の娘は市街地の中心を歩き、優先的大き目の建物を踏み潰していきました。
建物を踏み潰したのは、人を踏み潰す事をためらったからではありません。
大きな建物を踏み潰した方が、より、力を誇示出来るからです。
民家。寺子屋。医療所。
都に住む人々にとって大切な建物が、無慈悲に彼女の足の下で瓦礫に変えられていきます。
魔神の娘は都の中心部付近から寂れた方へと歩きつつ、都の中心部へと集まるように何度も促しました。
また、淡々と歩きながら、魔神の娘は言いました。
「これ程大きな都なのに、私に挑む者は居ないのですか?
 こんな小娘に蹂躙されて、悔しくはないのですか?」
何万人もの人間が住んで居る都ですが、人々はただ一人の娘から惑うばかりでした。
ここには、勇敢な武人は居ないのだろうか?
それは、魔神の娘の残酷なわがままでした。
この都のどんな建物よりも大きな巨人…人間の100倍サイズの巨人に平常心を持って立ち向かう者など、余程の勇者です。
そして、そんな勇者も魔神の娘の前では、無残に踏み潰される事になるでしょう。こんなに体の大きさが違っては、どうする事もできません。
それでも、彼女は自分に挑んでくる武人を求めていました。勇敢な者を見たいと思っていました。
何万人もの人間たちがいるのに、誰一人自分に挑んで来ない事に魔神の娘は落胆しました。
それから、都の外郭の辺りから円を描くように彼女は歩き始めました。
その歩みは都の中心部の方へと、円を描くように進み、足元に瓦礫と死体の山を築いていきました。
…この位で良いでしょう。
数時間前まで華やかだった都は、瓦礫と死体の山になりました。
戦が起こったのではありません。巨人による作業が行われた結果です。
生きている者、動いている者が居ない事に、魔神の娘は満足しました。
だが、瓦礫の割には死体は少ないようです。
運よく都の外へ逃げ延びた者も居るかもしれませんが、都の中心…王城を逃げた者が多いようでした。
魔神の娘の膝程…数十メートルの高さの城には、多くの群衆が詰めかけていました。
最後に人々が集まった場所…集まるように自分が命じた場所…へと、彼女は足を進めました。
自然と…
手を腰に当てて、見下ろすような姿勢になり、彼女は城を跨ぐようにして立ちました。
勝ち誇って、相手を嘲笑うかのような立ち方です。悪気は無いのですが、素直な性格の娘は、自然とそういう風に立ってしまいました。
「ここに集まった皆さんは、私の言いつけを守った皆さんですね
 約束を守る事は大事な事です。」
魔神の娘は、にっこりと微笑んだ。
人間の子供に追われて巣穴に逃げ込んだアリのように、無力で罪のない虫けらが城には集まっていました。
「ですが…」
魔神の娘は、元の無機質で冷たい表情に戻って城を見下ろしました。
「私は貴方達の先祖に約束を破られました…
 そして、冷たいランプの中に千年も閉じ込められたのです」
彼女の冷たい眼は、遠い昔を見つめていました。
「なので…
 私の言う通りに素直に従った皆さんには、死んで頂きます」
彼女の声は、わけもわからず城に逃げ込んだ群衆に向けられていました。
不愉快な気持ち…
どちらかと言えばおとなしい魔神ちゃんですが、今は大分感情が表に出ています。
次の瞬間…
空が暗くなりました。
ずしん!
それから、轟音と共に地面が揺れました。
横に揺れるのではなく、縦に揺れるのを城の兵士や逃げ込んだ人々は感じました。
何か巨大な隕石…いや、山でも落ちてきたかのような揺れでした。
城の上空が、何か丸く盛り上がった雲のような物ですっぽり覆われています。横から漏れてくる光だけが、薄暗く城を照らしていました。
よく見ると、それは二つに分かれて丸く盛り上がっています。その中心には巨大な穴…この城を吸い込むには十分な大きさの穴が開いていました。
薄暗い城の上空に開く大穴は、かろうじてピンク色に見えます。また、無数の皺が刻まれていました。
何が起こっているのか、誰にもわかりませんでした。
地面は、まだ小さく、継続的に揺れていました。
あまりに大きな質量が落ちてきたせいで、地面がおかしくなってしまったようです。
次に、女の声が響きました。
「皆さんは、私のお尻の下に居ます。
 残念ですが、皆さんの力では、逃げる事も出来ません」
それは、魔神の娘の声でした。
足を広めに開き、地面にしゃがみこんだ彼女の足元は、雲に隠れて良く見えませんでした。
ですが、長さが数キロに及ぶ彼女の素足は大地を踏み抜き、未だに地面を揺らしていました。
しゃがみこんだ彼女の股の下…肛門の下には、彼女の宣言通り、城がありました。
雲を貫く巨人となった魔神の娘は、堂々と大地にしゃがみこんでいました。
もう、魔神ちゃんは何も言いませんでした。
彼女のお尻は、城の上空を覆って、どこまでも続いています。
彼女が腰を降ろそうとしたならば、逃れる事は出来ないでしょう。
ですが、彼女にそんなつもりはありませんでした。
むずむずと、彼女のお腹が動いています。
1000年間…
彼女はランプの中に囚われていました。
その間、トイレに行く事すら出来なかったのです。
いくら魔神といえど、貯まるものは貯まります。出すものは出します。
…無慈悲に城へと向けられた大穴。
巨人の肛門が少しづつ震えるのを見て、城の人々は、魔神の娘が何をしようとしているのかを悟りました。
排せつ物を浴びせる拷問というのを、実際に行った兵士達も城には居ました。
また、処刑の方法として、窒息死するまで排せつ物を囚人の口に詰め込むという方法もあります。
そんな時、屈辱を与える為、あえて若い女子の排せつ物を浴びせる場合もありました。
今…自分たちは、そうして処刑をされようとしているのです。
ある者は、必死に城から逃げ出しました。
ある者は、巨人の肛門に向けて弓を射て、泣き叫びました。
それは、一種の地獄絵図でしたが、残念な事に、魔神の娘には、自分のお尻の下で起きている出来事が小さすぎて見る事も聞く事も出来ませんでした。
悠然と大地にしゃがみこんだまま、彼女は生理現象に身を任せます。
地鳴りを引き起こす低い音と共に、ゆっくりと、巨人の肛門からガスが放出されました。
それは、生温かい毒ガスとなり、瞬く間に城の周囲を覆いました。
巨人の肛門から放出された大量のガスは、ゆっくりと…鎧を着た兵士達を紙の吹き飛ばす程度の速さでゆっくりと…周囲の空気を吹き飛ばしていきました。
城の外に逃げた人々は、魔神の娘のガスの匂いを嗅ぐ間もなく、どこかへ吹き飛ばされてしまいました。
魔神の娘が、このように勢いを抑えてガスを放出したので、城は生温かい暴風に晒されたものの、吹き飛ばされずに済みました。
運の良い者は、魔神の娘のガスを吸い込んで呼吸が出来なくなって死にました。
運が悪い者は、毒ガスに覆われた城の中でもすぐに死ぬ事が出来ずに、空を見上げました。
女の子らしく可愛い、ピンク色の肛門が城の上空を覆っています。それが、一瞬で大きく広がりました。内部からの圧力で、無理矢理押し広げられたのです。
大きく広がった肛門は、女の子であれば、他人…特に男の子に見せるのを恥らってしまう下品な光景でした。
それから、貯まった排せつ物が無慈悲に肛門を押し開いて、城へと落ちました。
一瞬の出来事です。
魔神の娘トイレになる運命から、誰も逃れる事は出来ません。
城よりも遥かに大きな魔神の娘の排せつ物は、簡単に城を押し潰しました。
それどころか、瓦礫となった都の数分の一程が、彼女の排せつ物の下に埋もれました。1000年分貯めた、魔神の娘の排せつ物です。
醜くい茶色の塊で、耐え難い匂いを発する自らの排せつ物は、やはり、女の子であれば、他人…特に気になる男の子には見せたくはない物でした。
…女子の排せつ物で押し潰されるという屈辱を、これだけの人数に与えてやれば、もう充分。
一気に排泄を終えた魔神ちゃんは、心地よさに一息つきました。
それでも、魔神ちゃんの心は、いまいち晴れませんでした。
どんな復讐をしても、ランプに囚われた彼女の1000年の日々は帰ってこないからです。


4.次の願いは…

魔神ちゃんの目は、平静を装っていても、その心を誤魔化し切れませんでした。
怒りとも不機嫌とも言える冷たい目が、彼女の主人に向けられていました。
魔神ちゃんが、こんな目でご主人様を見るのは初めてでした。
「満足でございましたか?」
手のひらに乗せた小さなご主人様に向かって、彼女は言いました。
お尻もキレイに掃除した魔神ちゃんは、西の砂漠の国の衣装を着直して、すっかり元通りです。
100年位なら、またトイレに行かなくても平気でしょう。
「あ、あの…怒ってますか?」
片手を腰に当て、ぐいっと顔を近づけてくる魔神ちゃんの姿は、普通に見れば怒っている顔でした。
「お、怒ってなどいないです。私がご主人様を怒るなんて事はありません」
不機嫌そうに言った魔神ちゃんは、言葉を続けます。
「ただ、呆れているだけです。
 私は…恥ずかしいし残酷な光景だから、見ないで下さいと言ったのに…」
やはり、魔神ちゃんは、少し怒っていました。
「女子が排泄を行う所を眺める事が、そんなにお望みでしたか?
 何で、そのような事の為に、貴重な『お願い』を使うのか、私には理解ができません」
魔神ちゃんの冷たい目は、手のひらの上のご主人様を見ています。
排泄を行う所は見ないでくれと、魔神ちゃんは仇に言いました。ですが、仇はそれを断ったのです。
女子に興味がある若い男ならば、仕方ないと言えば仕方ない事ですが、彼は、それで魔神ちゃんへの『願い事』を一つ失いました。
たった三つしかない、貴重な願い事です。
「ごめんなさい…」
仇は、自己嫌悪を感じながら、しょんぼりと謝りました。今にも泣いてしまいそうにも見えました。
「ま、まあ…
 ご主人様のお願い事をどういう風に使ってもご主人様の勝手ですし…」
怖がらせ過ぎたかなと、魔神ちゃんも少し後悔しました。
「で…ご主人様は、どうでした?」
「魔神ちゃんのお尻、とっても綺麗でした」
「そ、その事では御座いません。
 都が滅ぼされるのを見た感想でございます!」
魔神ちゃんは、顔を赤らめて怒鳴りました。
もう少しで、手のひらの上のご主人様を吹き飛ばしてしまう所でした。
裸を見られるのは大して気にならなくても、トイレを覗かれるのは気になる年頃の魔神の娘です。
「あ、そ、そっちですか…」
仇も顔を真っ赤にして答えました。彼の頭の中は、魔神ちゃんが排泄を行う姿でいっぱいでした。
「そ、そうですね…
 思ったよりは…楽しくありませんでした」
気を取り直して、仇は答えました。それが、素直な気持ちでした。
「そうですか、実は、私もあんまり…」
怒りに任せて都を滅ぼしてみたものの、彼女も思った程楽しくありませんでした。
何かの退屈な作業でも行ったかのような気分でした。
「これでしたら、この前、仇様を捕えていた者達を処刑した時の方が…」
あの時感じた達成感が、今回はありませんでした。
…何故なのでしょう?
魔神ちゃんは、よくわかりませんでした。
「何だか…あまり面白くないですし…
 復讐はもう終わりにしませんか?」
仇は悩む魔神ちゃんに言いました。
「はい…元々、そのつもりで御座いましたし」
魔神ちゃんも、それには素直にうなずいた。
復讐で国を滅ぼして回るには、二人は心が優しすぎるようです。
しばらくして、魔神ちゃんは口を開きました。
「では…
 これからどうします?」
にっこりと彼女は微笑んだ。
「また、私の排泄行為を見物したいのでしたら、今度は真下でご覧になっても結構でございます。
 いえいえ、ご遠慮なさらずに。
 うふふ…なんでしたら、また雲よりも大きな姿になって差し上げます。ご主人様の為だけに」
にっこり微笑む、魔神ちゃんの目は、それ程には笑っていませんでした。
…あ、まだ怒ってるんだな。
魔神と言えど女の子です。
頼んで良い事と悪い事がある事を、仇は気づきました。

(完)


( ̄_ ̄)ノ あ ( ̄_ ̄)ノ と ( ̄_ ̄)ノ が ( ̄_ ̄)ノ き

(完)には違いないんですが、魔神ちゃんの話はもう一回だけ書きそうです。
最近調子良いんで、割とすぐ書けるかもしれません。興味無いですかそうですか。



( ̄_ ̄)ノ お ( ̄_ ̄)ノ し ( ̄_ ̄)ノ ま ( ̄_ ̄)ノ い