3つの願い


MTS作

0.夢か現か

…夢なのかもしれない。
仇(きゅう)は、冷静になるにつれて、目の前の出来事が信じられなくなってきました。
…あの時。
ランプに火を灯した時…私は炎に包まれた。
そうだ、今も自分は、炎に包まれているのかもしれない。死ぬ間際の幻を見ているのかも知れない。
幻…
そう、これは幻なのかもしれない。
とても、現実とは思えませんでした。
静かに揺れる、柔らかい地面の上に居ます。
どんな木々よりも高い所。下を見れば、土の地面は遥か下でした。
こんな高い所へ上った事はありません。
少なくとも100メートル以上の高さの地面に、仇は居ました。
急に、空が暗くなりました。
何かが彼の頭上を覆っています。
「ご主人様、どうかされましたか?」
頭上を覆っているのは女の子の顔でした。
不思議そうに小首を傾げた女の子が、仇の事を覗き込んでいました。
頭上を覆うと言っても、そんなに近くに彼女の顔があるわけではありません。
手を伸ばしても届かない位の高さに彼女の顔はありました。
それ程の大きさの、巨大な顔が穏やかに微笑んでいるのです。
巨人の顔が見下ろしているのは、彼女の手のひらの上でした。
仇が居る、柔らかい地面は、彼女の手のひらの上でした。
薄いピンク色の布を纏った彼女の身長は、仇の100倍程。手のひらどころか、指の上に人を乗せる事が出来る程の巨人です。
「あ、い…いえ…」
声をかけられて、仇は戸惑いました。
恐ろしい体躯の巨人には似つかわしくない、穏やかな女の子の微笑みです。
この笑顔…この胸に響く声…
幻にしては、具体的過ぎます。
巨人が顔を近づけて言葉を発すると、轟音と共に空気が揺れます。その事が、さらに仇の心を揺らしました。
正直に、仇は答える事にしました。
「私は…混乱しています。
 魔神ちゃんのように大きな女の子を見るのは初めてだし…可愛い女の子を見るのも初めてです。
 それに、魔神ちゃんみたいに可愛い女の子が、人を虫みたいに踏みつぶすのを見たのも初めてで…」
何もかもが、初めてでした。
遥か西の国の衣装を纏った巨人の手のひらに乗せられて、仇は、未だに戸惑っていました。
しっかりとした地面の上に居るようですが、自分が居るのは巨人の手のひらの上なのです。
彼女の手のひらが閉じられたら、仇の身体などはあっという間に握り潰されて無くなってしまうでしょう。
それどころか、彼女の指の間から零れ落ちてしまうだけでも、遥か下の地面に叩きつけられてしまいます。
ですが…
「ご主人様…不思議な事を言うのですね?」
巨大な首を傾げる巨人は、確かに女の子の顔をしていました。
軽く束ねられた髪が、無数のロープのように揺れています。
「可愛い…というのは、私のように大きな者が、ご主人様のように小さな人に使う言葉ではないのですか?」
巨人の娘は、手のひらに載せた小人を不思議そうに見つめていました。
…こんなに大きくて圧倒的な力を持った娘が、僕の言う事を聞いてくれるんだ。
『3つだけ願い事を叶えます』
魔神ちゃんは言っていました。
一つ、願い事を叶えたので、残る願い事は二つでした。
何を頼めば良いんだろう?
特に大した望みが無い少年には、贅沢な悩み事でした。

1.2つ目の願い事は

なるほど、確かに魔神ちゃんの言う事も間違っていません。
彼女から見れば、仇は小動物…いや、それ以下の小虫程度の大きさです。
指を乗せるだけで押し潰せる大きさの相手を可愛いと言う事は、間違いではありません。
ですが、仇は言いました。
「それはそうですけど、それでも魔神ちゃんは可愛いです。
 大きくても…可愛いものは、可愛いです」
男の子が女の子を可愛いと言うのに、身体の大きさは、それ程関係ありません。
たとえ、山のように大きな魔神でも、女の子には違いないのです。
仇の言葉を聞くと、魔神ちゃんは顔を赤く染めて戸惑いました。
「そ、そんな事はありません。
 ご主人様の方が、可愛いです」
言いながら、手のひらに乗せたご主人様に指を伸ばしました。
女の子の細い指が、仇の体を摘まみ上げました。
身体が地面…巨人の手のひら…を離れる事に驚き、仇は思わず魔神ちゃんの指を跳ね除けようとしましたが、彼女の細い指はまるで巨大な柔らかい柱のようでした。
…あら、ずいぶんと驚いてらっしゃいますね?
仇を摘まみ上げ、顔の辺りまで持って行くと、彼の表情までよく見えます。
驚いているご主人様の顔を見ると、魔神ちゃんは少し満足しました。
「ほら…やっぱり、ご主人様の方が可愛いです。
 これでも、まだ私の事を可愛いって思われるのですか?」
摘まみ上げた小人に向かって、ちょっと意地悪に魔神ちゃんは言いました。
そういう無邪気な仕草が、例え巨人であっても可愛らしく見えてしまう事。それに彼女は全く気付いていませんでした。
…この子は、何を考えているのだろう?
仇は少し悩みました。
「ま、魔神ちゃんは可愛いって言われるのが嫌なんですか?」
何だかんだ言っても、その体躯に見合った力を持った彼女から見れば、仇達人間は虫けら同然です。
そんな相手に可愛いと言われるのは、魔神ちゃんは嫌なのかも知れません。
悪い事を言ってしまったかと、仇は少し後悔しました。
「あ、いえ、べ、別にそういうわけでは…」
ですが、魔神ちゃんも戸惑いました。
可愛いと言われるのが嫌なのか?
そう問われると、別にそんな事はありません。
「ご主人様が仰るのでしたら、きっと私は可愛いのでしょう…」
恥ずかしそうに言いながら、仇を手のひらの上へと戻しました。
それから、無言でご主人様の身体に指を乗せ、押し潰さない程度に手のひらに押しつけてみました。
いくら魔神ちゃんが手加減していても、仇に取っては彼の体よりも遥かに大きな巨人の指です。
身体がすっぽりと彼女の指の下に埋もれてしまい、自分の力で逃れる事は出来ませんでした。
魔神の娘の照れ隠しというのは、受ける者にとっては命がけのようです。
ほんの数秒ほど魔神の照れ隠しは続き、仇は解放されました。
彼が見上げてみると、何となく目を逸らしている魔神ちゃんが居ます。
正面を見ると、彼女の豊かな胸が二つ、布で隠されながら盛り上がっていました。
大半の男の子にとっては、目を奪われる光景です。仇も例外ではありません。
その体躯に似合わず顔を赤らめている魔神ちゃんの様子を見ていて、仇は決心しました。
…願い事を言ってみよう。
「あ、あの、魔神ちゃんのおっぱい、抱きしめても良いですか?」
「…はあ?」
魔神ちゃんの目が点になりました。
呆れて物が言えないとは、こういう気持ちを言うのでしょう。
でも、顔を真っ赤にする事なら、仇は魔神ちゃんに負けない自信がありました。
頼まれる方も恥ずかしいですが、頼む方も恥ずかしいのです。

2.ご主人様

大地に巨人が横たわっていました。
巨人は、天を仰ぎながら考えます。
一つ目の願い…トイレを覗かせて下さい。
二つ目の願い…胸を抱かせて下さい。
若いうちから、こんな事ばかり言っていて良いのでしょうか?
呆れるのを通り越して、魔神ちゃんは心配にもなってきました。
…でも、ご主人様が求めているもの、必要な物は、そうした快楽なのかもしれませんね。
何年も囚われの身になっていた、仇。
同じようにランプの中に長い事囚われていた彼女には、彼の気持ちもわかります。楽しい事なんて無かったのでしょう。
例えば復讐に心を奪われ、国を滅ぼして回ったりするよりは、よっぽど理性的な願い事…と言えなくもありません。
少し恥ずかしいですが、魔神ちゃんは我慢する事にしました。
そういうわけで、巨人が大地に横たわっていました。
手足を大きく広げて、文字通り大の字になって天を仰いでいます。
目を閉じて、口をきゅっと結んだ姿は、何かを我慢しているかのようでした。
100メートルを超える程の巨躯の持ち主には似つかわしくない姿です。
「では、何でもお好きになさって下さい…」
魔神ちゃんは恥ずかしそうに言いました。
…やっぱりやめようかな。
仇は、とても悪い事をしている気分になりました。
嫌がる女の子の体を弄ぶなんて、基本的には心優しい彼には気が進みません。
大地に横たわる巨人の胸の辺り…丁度谷間の辺りに佇んで、仇は思いました。
人間の100倍程の大きさの魔神の娘です。
その胸の大きさは、両手に抱えるどころの大きさではなく、数階建ての建物程の大きさがありました。
こうして目の前まで近づくと、巨大な肉の塊です。可愛い女の子の体の一部とは考えにくい光景でもありました。
…そうだ、魔神ちゃんは、こんなに大巨人なんだもん。
仇は少し考え直しました。
いくら願い事だからと言っても、本当に嫌ならば魔神ちゃんは断る事も出来るはずです。
身体の大きさの違いは、そのまま力の大きさの違いになります。
胸にたかる虫けら程の男の子を指で払いのける事は、魔神ちゃんには造作も無い事なのです。
…別に、か弱い女の子を相手にしているわけじゃないんだ。
女の子と言っても、これ程の力を持った巨人です。
恥ずかしがっているものの、魔神ちゃんが自分のような小人に少し触られた位でどうなるはずもないのです。
何といっても相手は、大巨人。魔神の娘なのです
…などと都合の良い事を考えながら、仇は彼女の胸に手を触れました。
それは男の子の想像以上に柔らかい感触でした。手で突くと、無抵抗に手首辺りまで埋まってしまいます。もう少し押すと、恐ろしい弾力で押し返されてしまいました。
小山のような肉の塊です。その本体は微動だにしません。ただ、柔らかい表面の感触が小人の身体を弄ぶのみでした。
目の前にすると、大きすぎて巨大な肉塊にしか見えませんが、その柔らかい感触が女の子の肌である事を思い出させてくれました。
仇が股間に持っている男の子は、下着の中で元気になってきました。
…ど、どうしたら良いんだろう?
巨大な女の子の胸を前に興奮してきたものの、あまりに巨大な胸が相手です。どうして良いかわかりません。
成す術が無い仇は、うろうろと巨人の胸の周りを回っていました。周りを回るだけでも一苦労です。
…ご主人様は、何をしているんでしょう?
魔神ちゃんは、胸の辺りに何かが触れているのは感じます。小虫…じゃなくて、この小さな国の住人。ご主人様です。
どうやら、おっぱいの周りを這いずり回っているようです。
よく考えてみると、ご主人様は小さすぎるのです。せいぜい、そうやって這いずり回る事しか出来るはずがありません。
…やっぱり可愛らしいご主人様ですね。
無防備に横たわる女の子を前にしても、その胸の辺りを這いずる事しか出来ない程の大きさなのです。可愛いと思うしかありません。
「うふふ…」
思わず、小さく笑ってしまいました。笑うと、胸が揺れました。
…う、うわ!
魔神ちゃんにとっては小さく笑っただけでも、彼女の胸の辺りに居る小人にとっては一大事です。
胸にしがみつくようにして、仇は振動に耐えました。
「ご主人様、私の胸の周りを回るのは楽しいのですか?」
ちょっと意地悪に、魔神ちゃんは言いました。
「愚かな願い事をしたのがいけなかったのですね。反省してます…」
目の前にそびえ立つ、魔神ちゃんのおっぱいをどうする事も出来ず、仇はうなだれるばかりでした。
巨人の胸を間近で触って、ちょっと周りを回ってみただけでで、圧倒されてしまいました。
「やっぱり、これだけ体の大きさが違うと、色々難しいので御座いますね」
大の字に寝ころびながら、魔神ちゃんは少し悩みます。
「…そうだ、まだ元気があるようでしたら、私の胸を登ってみるというのはいかがです?
 さすがに、これではご主人様に満足してもらった気がしませんので…」
相手が無力な小人である事がわかると、魔神ちゃんは気持ちに余裕が出てきました。
いくら相手がご主人様と言っても、無防備な自分の体を好きにさせるのは緊張していました。
でも、今はもっと遊んで欲しい気にもなってきました。
「の、登るんですか…」
それは考えてもみない事でした。
女の子の胸を触ったり抱いたりする事は考えましたが、『登る』なんて…
でも、ちょっと面白そうだとも思いました。
「で、では登ってみます」
仇は柔らかい肉の塊を掴んで、登ろうとしました。
荒っぽく、彼女の胸を鷲掴みにして身体を支えます。その身体ごと、柔らかい魔神ちゃんの胸に埋もれ、這い登っていきます。
彼女に治してもらった手足は、まだ思うように動きませんが、それでも少しづつ彼女の胸を登りました。
まるで虫にでもなった気分ですが、悪い気分ではありません。
…こ、これ、気持ち良いですね。
自分の胸を小人が這いずりながら登っています。
魔神ちゃんは、微かなくすぐったさと心地よさ、それから物足りなさを感じました。
そう、物足りません。一人では物足りないのです。
もっと何十人もの小人に、一斉におっぱいを登らせるのはどうでしょう?
言う事を聞かなければ踏み潰すとでも言えば、誰でも自分の言う事を聞くでしょう。
彼らが精いっぱいの力で胸にしがみついてくると、くすぐったくて気持ち良さそうです。
…いやいやいや。私が楽しんではいけません。
魔神ちゃんは、思い直しました。
よく考えれば、おっぱいを登らせるなんて、ご主人様に何という事をさせているのでしょう。
急に魔神ちゃんは罪悪を感じて、胸の鼓動が早くなります。
でも、今更、やっぱりやめて下さいとも言えません。
快楽と罪悪感で胸を高鳴らせながら、巨人の娘が静かに横たわっていました。
やがて、仇は小山の頂上へと到達しました。
おっぱいの頂上は、もちろん平らではありません。気をつけないと滑り落ちてしまいそうです。
仇は、ちょうど彼の身体程の大きさの、硬い部分に掴まりました。
魔神ちゃんの乳首です。
濃いピンク色の巨大な塊は、少しグロテスクでもありましたが、それでも目を奪われてしまいました。
…女の子の乳首ってこんなに硬いのかな?
興奮している魔神ちゃんの乳首は、すっかり固くなっていました。
彼女の乳首は、彼の身体と同じ位の大きさです。これなら、抱きしめるのに丁度良さそうです。
仇は自然と、魔神ちゃんの乳首に手を回して抱きついていました。
ごぅ…
と、急に地面…魔神ちゃんの身体が揺れたので、仇は魔神ちゃんのおっぱいから転がり落ちてしまいました。
何事かと思って、彼女の顔の方を見ると、少し体を起こした魔神ちゃんが顔を真っ赤にしています。
乳首に触れられた感触で、思わず彼女が身をよじってしまったのです。
「あ、すいません…
 もう、終わりにしますね」
彼女の様子を見た仇は言いましたが、
「い、いえ…その…」
魔神ちゃんが首を振るので、また大地が揺れました。
言いたい事が言えず、もじもじとしているようです。
どうやら、やめて欲しくはないようです。
そういう事なら…
仇は少し戸惑いながら、彼女に言いました。
「じゃ、じゃあ…
 何かして欲しい事があったら、僕がしましょうか…?」
先ほどの考え…自分のような小人が何をしても、魔神ちゃんにとってはどうという事は無い…
それが、どうやら間違っていた事に、仇は気づきました。
魔神ちゃんは胸に触れる小人の事を感じています。
「で、でも…」
ですが、魔神ちゃんは恥ずかしそうにするばかりで何も言いません。
まさかこんな風になるとは思わず、仇は困ってしまいましたが、彼は言いました。
「今だけ、魔神ちゃんが僕のご主人様になったつもりで…何でも言って下さい」
心の優しい少年です。言いながら、恥ずかしそうにしている巨人の乳首を抱きしめました。
「わ、私がご主人様のご主人様なんて!
 で、では、ご主人様はご主人様のご主人様のご主人様というわけで…」
魔神ちゃんは、大分動転しています。
しばらく何やらぶつぶつと言っていましたが、やがて恥ずかしそうに言いました。
「じゃあ…もっと力を入れて抱きしめて下さい…噛みついて下さい…
 ご主人様の小さな体では、刺激が足りないのです…」
なるほど、もっともな言い分です。
仇は言われるままに、精一杯の力を持って巨人の乳首に噛みつき、愛撫しました。
いつしか、魔神ちゃんの右手は小人の身体に添えられ、彼を支えながら、乳首へと優しく押し付けるようにしていました。
また、彼女の左手は自らの股に添えられ、自分の秘所を擦っていました。
仇と魔神ちゃんの、どちらが先に尽き果ててしまったかはわかりませんが、日が暮れる頃には、二人共疲れ果てていました。
夕暮れ、まだ、仇は魔神ちゃんの胸元に居ます。
「ほら…こんなに濡れてしまいました」
何故か自慢げに、自分の愛液で濡れた左手の指を、魔神ちゃんは胸元の小人に押しつけました。
「う、うわ…」
生温かい粘液は、男の子には縁がない感触でした。
仇は思わず逃れようとしましたが、まだ興奮している巨人の指は、構わず彼を自分の胸へと押し付けました。巨人の娘の悪戯から逃れる事は出来ません。
疲れ果てていても、少し指を動かす位の元気は魔神ちゃんには残っています。
そのまま、彼女は愛液まみれになった小人を口元へと運びました。
にっこり微笑んだまま口を開けて、迷わずに小人の身体へと舌を伸ばしました。
「では、キレイにして差し上げますね…」
そして、愛液まみれになった仇は、今度は唾液まみれになる事になりました。
…やっぱり、つまらない願い事をした罰が当たったのかな。
愛液と唾液に溺れそうになりながら、仇は考えました。

3.最後の願い事

…これで、おしまいか。
そう考えると、寂しさしかありません。
あと一つ、願い事を言えば、それで魔神ちゃんとの約束はおしまいです。
彼女の手のひらの上で、仇はため息をつきました。
「な、なんというか、申し訳ございませんでしたというか、ありがとうございましたというか…」
気持ちが落ち着いた魔神ちゃんは、顔を真っ赤にして、身体の割には小さな声でぼそぼそと何か言っています。
そんな彼女の様子も、これで見納めです。
最後の願い事…
仇は、ゆっくりと口を開きました。
「じゃあ、最後の願い事は…」
その途端、急に彼の視界が真っ暗になりました。
身体が巨人の手のひらの上へと押し付けられました。
魔神ちゃんの指が、彼の口を身体ごと封じたのです。
「あー、ちょっと待って下さい、ご主人様」
そーっと指を離しながら魔神ちゃんが言いました。
「そんなに焦らず、もう少し、ゆっくり考えてはいかがでしょう?」
「ゆっくりって…どの位ゆっくりですか?」
「100年位でしたら、お待ちします」
魔神ちゃんは、にっこりと微笑みました。
…随分ゆっくりだな。
仇は、苦笑いしてしまいました。
「ご主人様、行く宛てが無いようでしたら、私の国へと参りませんか?
 私の姉や妹達にも、ご主人様を紹介したいと思います」
魔神ちゃんは言いました。
仇の住んでいた小国は、もうこの世界のどこにも残っていません。
また、彼の居た国を滅ぼした者達も、魔神ちゃんの足の下か排せつ物の下へと消えてしまいました。
…ああ、そうか。
仇は気づきました。
もう、この世界の中で、良くも悪くも自分に関係がある者は、目の前に居る巨人だけなのです。
「じゃあ、お願いです。
 僕を魔神ちゃんの国に、一緒に連れて行って下さい」
「い、いえ、ですからお願いは…」
仇の言葉を聞くと、魔神ちゃんは真っ青な顔で答えました。
「あ、そ、そうだ。やっぱりやめます…」
「はい、出来れば、そうして下さい…」
何とも言えない空気。
口を開くのがためらわれる空気が、二人を支配しました。
「…では、そういうわけで参りましょうか」
無理矢理に笑顔を作って言ったのは、魔神ちゃんでした。
こういう時は、体の大きさに関わらず、女の子の方が強いようです。
仇は、恥ずかしそうに微笑みながら、頷きました。
その後…
この東の地方で、二人の姿を見た者は居ませんでした。
『どうか、故郷へ帰って幸せに暮らして下さい』
仇の最後の願いは、言う必要が無くなってしまいました。
その言葉を、彼はいつまでも胸にしまっておいたとの事です。

(完)

( ̄_ ̄)ノ あ ( ̄_ ̄)ノ と ( ̄_ ̄)ノ が ( ̄_ ̄)ノ き

これで、ほんとにおしまいです。

(⌒∇⌒) ノ めでたしめでたし…


( ̄_ ̄)ノ お ( ̄_ ̄)ノ し ( ̄_ ̄)ノ ま ( ̄_ ̄)ノ い